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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード29)「堕落の日々と気付き」

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード29「堕落の日々と気付き」




四十九日までは、何があっても、俺が崩れる訳には行かない、嫁さんに安心して眠って欲しい…その一念だけで、様々な事に耐えて来た…。

嫁さんの親族が出席しない、いびつな四十九日の法要と、疑問を抱きながらの、絶縁…。

嫁さんの俺に対する思いや、娘を思う気持ちを、人づてのメッセージも含め、ほんの少しづつだがそれを受け止め、嫁さんの思いに答えて行かなければと考えをスライドしようとしていた矢先の、身内だと思っていた人間からの自己の全否定…。

元来、自責の念に囚われていた俺の精神が、坂道を転がり落ちて行くには十分過ぎる一押しだった…。

まずは、負の自問自答が始まる…。

「なぜ、電話をくれた時に、すぐに帰ってあげられなかったのだろう?」

「お前の事は、俺が守ってやるなんて言っていたのは誰?」

「俺はあいつに、何をしてあげられた?」

「俺と出会わなければ、嫁さんが命を落とす必要は無かったんじゃないのか?」

様々な自問の中で、導き出される答えは一つだけ…。

(俺の力不足…)

その時に出た答えが、俺は死んで嫁さんに詫びを入れなければならない大罪を犯したんだ、後は死に方の問題だけか?

俺は自分の命を懸けてでも守るべき者を守りきれなかった、時代が時代なら、切腹ものの重罪、腹を切ろうと本気で考えた…。

深夜、包丁を取りにキッチンへ向かおうとする。

「ぱぱ、おしっこ?」

眠っていたはずの娘の声に振り返る…。

「〇〇もおしっこ、いっしょにいこう。」

「いいよ、一緒に行こうか?」

「うん。」

娘のトイレを済ませ部屋に戻る…。

「ぱぱは、おしっこいいの?」

「うん、大丈夫になった…。」

「ふーん。」

「あのさぁ、パパね、ママに凄く凄く悪い事をしちゃったのね、だからさぁ、ママにごめんなさいしに行こうと思うんだ…。」

「まま、ねんねしてるところにいくの?」

「…うん…、そしたら、〇〇は、パパがいなくても、おじいちゃん、おばあちゃんのところで良い子にしてられる?」

「ぱぱ、すぐかえってくる?」

「ママが許してくれないと帰って来れないかな…。」

「ままに、ごめんねするだけでしょ?まま、すぐに、いいよっていってくれるよ。」

「そうかなぁ?ママ、パパの事許してくれると思う?」

「ままも、ぱぱも、わるいことしたら、ほんとにごめんねしたらいいよっていうって〇〇にいってたじゃん!」

…言葉を失った…。

嫁さんから、名指しで託された、娘への責任感と、それでも消えない自責の念から来る自殺願望の板挟みの日々が続く…。

丁度その頃から、娘を地元の幼稚園に通わせる事が決まる。

毎日娘の弁当を作り、幼稚園の送り迎えをする事だけが、日々の日課になった…。

娘といる時間以外は、全くの無気力で、嫁さんの仏壇の側で呆けているか、酒を飲み続けているかの生活になって行った。

大量のアルコールを飲まないと眠れなくなった、食事も摂れなくなった、嫁さんを亡くしてから約2ケ月で60㌔あった体重が44㌔まで落ちた。

風呂に入れない時も多くなった、無気力とだるさ…、それに加えて、風呂に入る度に、嫁さんのパジャマ姿がフラッシュバックを起こす事も原因の1つだった…。

幼稚園の送り迎え以外の外出も殆ど無くなっていた。

家族と会話を交わす時間も殆ど無くコミュニケーションも上手く取れなくなって行く。

家族との不協和音が聴こえ出す。

たまたま、家族で酒を飲む時間があった。

「お前、四十九日も終ったのに、いつまで、何をしているんんだ?酒ばっかり飲んで、飯も喰わねぇでガリガリになって。」

「悪りぃね…、ただ俺も好きでこんな事をやってる訳じゃないんだけどさ…、体が思う様に動いてくれねぇんだよ…、気持ちも追いつかねぇしさ…。」

「情けねぇ事言ってんじゃねぇよ!、そんなもの、お前がだらしねぇからだろ!?」

「体が言う事利かねぇんだっつってんだろうが!」

「まさか、お前まで病気だなんて言うんじゃねぇだろうな?」

「医者に言った訳じゃねぇから、ハッキリは言えねぇけど、この状態だったら、誰が見ても病気なんじゃねぇのか?」

「今回は、状況が状況だったから、今まで何も言わなかったけどな、周りの人達は、お前の事どう思ってるのか知ってるか?、四十九日も過ぎたのに、働きもしないで、情けない男だって、殆ど病気だって思われてんだぞ!」

「そうだろうな、そんなに迷惑掛けてんだから、俺、嫁さんの所に逝くわ…、娘の事だけは、よろしくお願いします。」

「情けねぇ事言ってんじゃねぇよ!!」

その言葉と同時に、親父のビールグラスが俺を目掛けて投げ付けられる。

体を捻ってグラスをかわすもグラスがかすった腕から血が流れる…。

そこからは、還暦に近い親父と、30を過ぎたいい大人同士が、部屋中のガラスが割れるほどの殴り合い、数分後、頭を割られた俺と、顔が変形した血みどろの親父がいた…。

親父が捨て台詞の様に残していった一言…。

「お前が少しでも、元のお前に戻れるんなら、病院でも何でも行って来い!ただ、俺は、お前が病気だなんて認めねぇからな…。」

職人気質の親父なりの最大の妥協であり激励だったのだと思う、ただ、狭い町の中、家族から精神病の人間が出る事は、家族には抵抗があったのだろう…。

悲しいかな、ここにも、精神疾患に対する偏見があった…。

翌日、家族の手前二の足を踏んでいた、精神病院へ足を運んだ…。

地方の精神福祉事情は正直、恵まれているとは言い難い、立地もその一因だが、絶対数の少なさから、自分と相性の合うDrと出会うまでも時間を要する。

俺の場合も、主治医と呼べるDrに会えたのは、3人目の先生だった…。

主治医が出した診断は、『心的外傷後ストレス障害』通称『PTSD』と言われる診断だった。

投薬治療が始まる、俺の場合現実逃避の為のアルコール依存も合った為、薬との相互作用で幻覚を見る事もあったが…。

薬の効果が出はじめると、徐々に外出が出来る様になった。

だが、それは俺自身の堕落への第一歩だった…。

はじめは、昔の仲間に誘われ、飲みに行きだした程度だった。

それが徐々に、誘われる側から、誘う側に回り、気が付けば、娘を寝かし付けた後は、お袋に娘を預け、娘が起き出す時間に部屋に戻るほど、飲んだくれる日々が続いた…。

行き先は様々だが、飲みに行く場所には、必ず女の子がいた…。

店が終るまで飲み続ける、店が終ると、女の子を連れ出し、朝まで飲み続ける…。

女の子が目的ではなかった、現実、女の子から誘いを受ける事もあったが…そんな自堕落な生活を送りながらも、俺の心の中には嫁さんしかいなかった…、俺の鞄の中にはいつでも、嫁さんの遺影が入っていた。

そんな自堕落な生活から足を洗わせてくれたのも、やはり嫁さんだった…。

その日、一人クラブのカウンターで飲んでいた俺に、何度か顔を合わせた事のある若い男の子が声を掛けてきた。

「嶋村さんて、お仕事何やってるんですか?」

「子持ちのぷー太郎だよ。(苦笑)」

「飲み代どうしてるんですか?」

「残り少ない嫁さんの保険金食い潰してる。」

「嶋村さん何かやりたい事とか無いんですか?」

「何していいかわかんねぇから、こうして、ダラダラ飲んでるんだよ。」

その時、不意に、嫁さんと交わした何気ない会話が頭をよぎる…。

「わたしがさぁ、このまま、病気が良くなって、元気に動ける様になったらさぁ、わたしと同じ様に辛い思いをしてる人達の何か役に立てる仕事がしたいんだ…、なりさんどう思う?」

「そうなんだ、いいんじゃない、ただ、お前がしっかり元気になるのが先だけどな…。」

そうか…、俺がしたい事を探そうとしてたから前に進めなかったんだ…。

事実、将来的には、自分の飲食店を持ちたいと言うのが、嫁さんと暮らしていた時の俺の目標ではあった…。

その目標だけなら、嫁さんの残してくれた保険金で実現する事も可能だった。

ただ、いつも心に、嫁さんの金で自分のやりたい事を始める事に罪悪感があった…。

結果として、更に性質の悪い、金の使い方をしてしまう事になってしまったのだが…。

嫁さんの思いを、嫁さんの意思を繋げる事が出来るのなら…。

その時から、俺の進むべき方向が、ぼんやりと見えてきた気がした。



続く
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テーマ:たいせつなひと。 - ジャンル:心と身体

  1. 2008/10/31(金) 06:05:29|
  2. メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…
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お詫びとご報告

ここ最近、公私共に様々な事情があり、mixiにログイン出来ない状況が続いておりました。

また、嫁さんとの日記も、佳境を向かえており、情けない話ではありますが、1本書き終えただけで、PCを離れざるを得ない心境になることも多々あり、その間にメッセージを頂いている皆様には、返信が滞っている状況にあり、大変申し訳御座いません。

返信をお待ちの皆様は、大変申し訳ないのですが、嫁さんとの日記を書き上げるまでの数日間、お時間を頂ければ幸いです。



また、法人の認証を頂いてから約1ヶ月のNPO法人NATURAL REBORNですが、関係各所や行政へのご挨拶も徐々にですが進んでおり、イベントやセミナーなどの開催や、皆様からのご意見やご質問を伺うためのコミュニティも、本日より正式に運営しようと思っています。

メンタル疾患の有無に関わらず、幅広く一般の方にも参加して頂ける、イベントも企画しております。

ご興味をお持ちになった方がいらっしゃいましたら、お気軽にご参加下さい。

テーマ:うつ病(鬱病)、メンタルヘルス - ジャンル:心と身体

  1. 2008/10/28(火) 21:51:45|
  2. NATURAL REBORN
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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード28)「最愛の妻より、そして、自らの精神疾患」

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード28「最愛の妻より、そして、自らの精神疾患」

嫁さんの火葬が終った。

「お葬儀は、田舎でやろう。」
狭いマンションで無く、広い場所で送ってあげたい、俺の親からの提案だった…。

気が付けば、月末までに、マンションを引き払い、実家に連れ帰られる事が決まっていた。

それが合図だったかの様に、嫁さんの親父さんとお姉さんが、嫁さんの遺品である洋服や貴金属を、俺の知らない間に処分していたり、嫁さんの実家に送ろうとしている事にも、違和感を感じずにいた…。

人が周りにいる状況が多かった為、気は張っていたが、俺自身の判断能力は著しく低下していた事は明らかだった…。

バタバタした状況の中、火葬が終った当日、夜の新幹線で俺の実家を目指す…。

俺の腕の中には、ずっと、嫁さんが納められた白い木箱があった…。

帰省翌日、改めて通夜が行われた、数百人の焼香客に、頭を下げ続ける…。

その中に十年近く不義理をしていた、同級生達数十人の顔が見えた時、それまで抑えていた感情があふれ出した…。

「今まで、何の連絡も無しに、こんな時だけ、来て貰って申し訳無い!」

友人の中の一人が言った…。

「何も言わなくていい…、何年経っても仲間だろ?落ち着いたら飲みに行こうな!」

自分の不甲斐なさと、仲間の有りがたさとが混乱し、涙が止まらなかった…。

翌日の葬儀を仕切ってくれる、お寺の住職さんを呼び止め、住職さんにだけ、事の顛末を包み隠さずに話す。

嫁さんの魂(というものがあるのだとすれば)が少しでも安らかに眠って貰いたかったから…。

翌日の葬儀については、以前触れた通り、俺の当時の心境を来客に伝えられたと思う…。

曜日の都合で、火葬が遅れた事や、帰省しての葬儀になった事などから、初七日はすぐにやって来た、二七日、三七日、四七日、四十九日、と仏事は続く…。

状況が状況だった為、最低でも四十九日までは、嫁さんの側にいてあげたい、その想いだけで、仕事も辞めた…。

仏事の合間を縫い、娘と二人で何度か東京へ戻る、職場への挨拶、引越しの準備、役所の手続き、やらなければいけない事は山積していたが何よりも、嫁さんの友人達に会いに行くのが、俺の一番の目的だった…。

嫁さんが俺以外に見せている気持ちの一面を聞きたかったというのが本音だった。

嫁さんの友人達に何度かに分けて話す機会を作って貰う…。

「嫁さん、俺の事、何か言ってませんでしたかね?」

「何か不満だったり、愚痴だったり、聞いていませんか?」

会う人それぞれに、同じ質問をぶつける…。

帰ってくる答えは、口を合わせた様に同じだった…。

「色々、不満とか、愚痴とか聞いた事あるけど、〇〇ちゃんの口から、嶋村さんへの文句って、一度も聞いた事が無いんですよ、ママ友達が集まった時だと、大抵、旦那の文句の一つも出るのに、〇〇ちゃんからだけは、嶋村さんの文句一回も聞いた事無かったなぁ。」

病院や保育園でも、不満や、悩みの中に、俺の事が出て来る事は無かったらしい…。

不満が無かった筈は無い…

現に嫁さんとは何度と無く大喧嘩をやらかしている、それと同じくらいの数の仲直りも…。

ただ、それが愚痴となって、誰かに伝わっていても何もおかしくは無い…。

確かに、家から一歩外に出ると、どんな状況でも年下の俺を立ててくれる、人前では、何があっても、俺を馬鹿にする様な言動は絶対にしない本当にできた嫁さんだった。

一度、嫁さんにその事を聞いた事がある、嫁さんの答えは極めてシンプルだった。

「なりさんに恥をかかせるって事は、『自分の旦那はダメ男ですよ』って、わたしが言うのと一緒でしょ?わたしは自分の旦那ちゃんに自信あるもん。」

(俺も自分の嫁さんに自信持ってるよ)その一言を告げられなかった事が今も胸に残っている…。

一人のママ友達が俺に言ってくれた…。

「私がね、〇〇ちゃんになんで、旦那さんの文句言わないのって聞いた事があるのね、そしたらね、『うちの旦那とはいくら喧嘩しても、最後は必ず、仲直り出来るまで話合いをするから、途中経過で愚痴は言わない様にしてるんだ…、それと、信じてるから』って言ってましたよ…『旦那と会っても絶対言わないでね』って釘刺されましたけど…。」

その時はじめて、嫁さんが俺の事をどれだけ信用してくれていたのか知る事になる…。

(言葉なんか無くても、俺の気持ちは伝わっているだろう…)そんな俺の根拠の無い自信は、微塵に砕かれた…。

嫁さんは、愛情を『言葉』と『行動』の両方で表してくれた…。

俺は何をしてあげれていた…?

それなのに、嫁さんは…。

その時は、自分を責める事しか出来なかった…。

嫁さんを亡くしてから、はじめて東京に戻って来た夜、不思議な夢を見た…。

その日も、人にあった後、嫁さんと最後に一緒に飲んだバーに娘を連れて食事をさせながら、深夜まで、バーボンをあおっていた…。

すでに眠っている娘を抱きかかえ、タクシーで嫁さんとの思い出の詰まった部屋へ戻る…。

一組だけ残してあった布団とタオルケットを敷き、枕元に、写真立てに入った嫁さんの遺影を置いて眠りに付く…。

薄皮一枚の浅い眠り、嫁さんが亡くなって以来、夢を見なくなっていた俺が見た夢…。

夢の中の俺は、枕元に置いたはずの、嫁さんの遺影を探していた…。

どんなに探しても、遺影は見つからない…。

狼狽している俺の前に、その時一人の女の子が現れる…。

小学生くらいの女の子、黒いワンピースを着ている…。

女の子が何も言わず、嫁さんの遺影を優しく渡してくれる…。

その女の子の髪は、嫁さんと同じ髪型、口元には、嫁さんと同じ位置にほくろがある事に気付く…。

驚いて目を醒ますと、枕元の遺影は、しっかり、俺の手に握られていた。

偶然なのだと思う、ただ、その時は嫁さんが体を失っても、俺の世話を焼きに来てくれた様な気がした。

嫁さんの遺影に思わず、独り言が漏れる…。

「お前、今でも気に掛けてくれてんのか?ごめんな…いつも、心配させてごめんな…、でも、ありがとう、会えて嬉しいよ…、ちっちゃいお嫁ちゃん。」

偶然だろうが、思い込みだろうが、「嫁さん?」に再会できた事は、なによりの贈り物だった…。

翌日は役所に行った、役所での手続きは、死亡届けと、精神障害者手帳の返還手続き…。

分かってはいたが、俺の戸籍の隣から、嫁さんの籍が抜けるのは、書類上の事とはいえ、一言では言い表せない、複雑な心境だった…。

何度か東京と田舎を往復しながら、いろんな人達とも会い、嫁さんの当時の心境の断片には、触れる事ができた気がしていた…。

四十九日の前日、辛うじて自力で支えていた俺の精神力が、一本の電話で叩き折られる事になる…。

同じ痛みを分かち合っている…と、俺が勝手に思い込んでいた、嫁さんの親族からの、絶縁と言う現実だった。

内容を掻い摘むと、俺の事は信用する事が出来ない、何かを隠している筈だ、今後の仏事にも、墓参りにも一切行きません、お付き合いの一切をやめるので、〇〇ちゃん(娘)を連れて来るのもやめて下さい。

という、一方的な内容だった…。

嫁さんの保険金の事も話された気がするが、殆ど記憶に残っていないし、また、ここに書くべき内容でもないので、割愛する。

人間は自分が耐え切れない、出来事が起きると、自分以外の誰かに、その責任を転嫁しようとする。

その心理は理解できるし、今回の場合、責任を転嫁するのに最適なのは俺であろう事は理解できるし、事実、嫁さんの自殺を回避させる事が出来たのは、俺以外にはいなかったと思う。

嫁さんを助ける事が出来なかった事実は、今後、俺の心臓が鼓動を止めるまで背負って行くべき十字架だとも思っている。

ただ、娘に関しては、どういう気持ちで切り捨てる事が出来たのか、今でも疑問が残っている…。

四十九日の法要を終えた翌日、保険金の約半分を判断能力が欠落していた状態で、送金する事になる…。

四十九日、使命感だけを頼りに、節目の仏事を迎える事ができた緊張感の途切れと、思いもよらない絶縁の報によって、薄皮一枚で繋がっていた俺の精神力は、五十日目で崩壊を向かえる…。

それは、自分自身と病気、家族、閉鎖社会との闘いの始まりでもあった…。

坂道を転げ落ちる、岩の様に…。




続く

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  1. 2008/10/28(火) 21:50:01|
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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード27)「肉体の消滅」(後編))※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。



エピソード27「肉体の消滅」(後編)



返答の無い夫婦の会話を続けた夜が明ける。

様々な形で連絡を取った嫁さんの友人や知人が嫁さんの顔を見に来てくれる。

嫁さんの亡骸を見た人達の反応は人それぞれ…。

泣き崩れる人、現実を受け止められずただ事務的に焼香を済ませる人…。

全ての人の対応に、俺自身が、崩れてしまわない様、気を張り詰めていた。

嫁さんの死因については、嫁さんの病気に対して本当に理解のある方だけに、事実を告げた…。

理解の無い人達に対して事実を告げ、嫁さんの死を曲解されたまま誰かに伝えられるのは、俺にとって、許し難い事だったから…。

事実を人達に関しては、日を改めて、話す時間を作る事を約束し、その日を終える。

翌日は火葬…。

その儀式が終ってしまえば、嫁さんの体に触れる事も髪を撫でてあげる事も出来なくなる…。

その夜は、朝まで、嫁さんの体に抱きつき、頬を寄せ、髪を撫でた…。

いつもの笑顔を返してくれない嫁さんの顔に…。

ドライアイスとエアコンで、氷の様に冷たくなった嫁さんの体に…。

何度も何度も…。


翌日、火葬場まで嫁さんを運んでくれる為に葬儀社の人達がやってくる、それまで眠っていた布団から、棺へ嫁さんが移せれる…。

なぜか一筋だけ涙が流れた…。

火葬の準備が始まり、安らかな寝顔の様な表情のまま、棺の中に横たわる嫁さんが、嫁さんの好きだった色の花に囲まれていく…。

その顔の側に、嫁さんの好きな、本や、タバコ、そして、風邪気味だった嫁さんの為に、二人の常備薬だった風邪薬と、娘からのプレゼントを添える。

そこで、火葬の担当者が一言…。

「お見送りの準備もお済になりました様なので、もしよろしければ、定刻にはまだお時間がありますが、予定を早める事も出来ますがいかが致しますか?」

「!?」

その言葉の意味を理解し、唖然とした…。

それが怒りに変わるまで、殆ど、時間は要さなかった。

「おい!葬儀屋!今の言葉どういう意味で言った?どこの馬鹿がてめぇの嫁さんを少しでも早く、釜の中に入れたいと思う奴がいると思うんだ!?」

「申し訳御座いません…。」

「マニュアル通りに喋っただけなんだろうがよ、人の気持ちも考えてからものを喋れ!!これから時間まで、そのうす汚ねぇ口を二度と開くな!!まだ別れの準備なんか済んでる筈がねぇだろうが!!」

「はい…、申し訳御座いませんでした…。」

「ぱぱ、おおきいこえだしたら、ままねんねできないよ。」

「そうだな…、ごめんね、びっくりした?」

「うん。」

「よし、ママにもう一回、おやすみ言いに行こうか?」

「うん!」

娘を抱いたまま、よめさんの棺の側へ戻る。

「まま、おやすみなさい、げんきになったらまたあそんでね。」

娘に嫁さんの顔を見せ、娘を友人に抱っこして貰う。

最期の嫁さんとの会話は二人だけでしたかった…。

「…お嫁ちゃん、ごめんな、正直さぁ、このまま、お前と一緒に棺桶の中に入らせて貰いてぇよ…。」

「…でも、それは、お前が許してくれねぇんだよな?」

「だから、遺書に俺を名指しで、俺達の子供預けてくれたんだよな?」

「たくさんの幸せを与えて貰ったのは俺の方だよ、同じだけの幸せ返してあげれなくてごめんな…。」

「結婚式の時、神父さんが『死が二人を別つ時まで愛し続ける事を』なんて言ってたけどさ、これからも、俺は、お前の事を愛し続ける事を約束するからな…。」

「だから、『さようなら』は言わない、先にいって待ってて欲しい…、それまでは、ゆっくり休んでていいんだからな。」

「寂しい思いをさせてごめんな、辛い時に側にいてあげれなくてごめんな…、これからは、お前は寂しい思いも、辛い思いも、悲しい思いもしなくていいんだからな。」

「お前が、これから感じるはずだった、辛い事、苦しい事は、全部俺が引き受けるから…、だから、ゆっくりおやすみ…・」

「さよならの代わりに…ありがとう…」

「…そろそろ、お時間です…。」

嫁さんの棺が動き出した時、棺によじ登り、嫁さんと最期のキスをする…。

よめさんの唇に体温が戻った気がした…。

「愛しています心から…、ありがとう…おやすみ…。」

数十分後、嫁さんの体は、白い箱に収められていた…。

俺の嫁さんに対する愛おしさは、何も変わっていなかった…。



続く

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  1. 2008/10/17(金) 22:50:50|
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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード27)「肉体の消滅」(前編)※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。



エピソード27「肉体の消滅」(前編)



嫁さんの死亡確認をし娘を抱いて呆けていた、俺を待っていたのは、警察の検死だった…。

「嶋村さんですか?」

「はい…そうですが…。」

「奥様の死因についてですが、変死の報告が届いていまして、悪いんですが、嶋村さんこれから現場を見せて貰ってもいいですか?」

「分かりました…。」

病院から警察の車に乗せられ、娘と自宅へ戻る…。

「嶋村さんが、家に帰ってきた時の状況を教えて貰えますか?」

その時の自分が思い出せる限りの状況説明をする…。

「奥さん、自殺と聞いてますが、遺書はありましたか?」

「…これがそうだと思います。」

嫁さんの遺書を刑事さんに見せる。

「なるほどね…、奥さんが、亡くなった時間、ご主人は、どこにいましたか?」

「病院で聞いた死亡推定時間には、まだ職場にいました。」

「そうですか、奥さんが亡くなっていた場所を見せて貰えますか?」

「風呂場です。」

『奥さんが亡くなっていた』他人から言われる事で、嫁さんが本当に、生きていない事を思い知らされる…。

「お風呂場の状況は?」

「奥さんの向きは?」

「どういう風に、亡くなっていました?」

「目は開いてました?」

「口は空いてた?」

「病院で奥さんを見た時に手首にリストカットの跡があったけど、それは、以前からあったの?」

「その事は知ってた?」

次々にぶつけられる質問に、わずか数時間前の記憶がまざまざと甦ってくる…。

事務的に答える事にも限界が来る。

耐えられなかった…。

「刑事さん、この尋問いつまで続くんですかね?いい加減嫁さんの死に様、事細かに思い出すのイヤなんですけど!!」

「すいませんでした、遺書もあるし、自殺で間違いないと思いますが、確認の為に、奥さんの自筆のメモとかありませんか?筆跡鑑定だけしたいので、それと、遺書を一度貸して頂けますか?」

「すぐに返して貰えますか?」

「遺書もメモも、コピーをとったら、すぐに届けさせます。」

「分かりました。」

もう一度車に乗せられ、病院に降ろして貰う、娘と乗せられた車が、パトカーでない事が唯一の救いだった…。

車から降りて、嫁さんの実家と俺の実家に電話を入れる…。

事実だけを伝える事しか出来なかった…。

両家とも、遠方からの上京、事情を飲み込むまでの余裕は無かったのだろう、出来るだけ早く、向かうとの事だけ確認し電話を切った…。

到着は3時間後くらいだろうか…?

隣では、娘が無邪気な笑顔を見せている…。

パパのお休みに、一緒にお出掛けでもしているつもりなのだろう…、その娘の笑顔に、空っぽの作り笑いを返すのがやっと…。

誰かに側にいて欲しかった…。

それまで、いつでも強気の姿勢を貫いて来た俺は、あの日、はじめて、本当の意味での『孤独』というものを知ったのだと思う。

俺が最も信頼している友人に電話をした、忙しいのは百も承知普段なら一度では繋がらないはずの電話が、その日は繋がった…。

「おう!どうしたの?こんな時間に珍しいねぇ、…なんかあった?」

「忙しいとこ悪いっすね…、いや、…嫁さんが亡くなっちゃいました。」

「嶋ちゃん今、どこにいる?」

「〇〇病院の霊安室です。」

「30分くらい待って!これから、すぐに行くから!」

「……今日だけ、甘えさせて貰ってもいいっすかね…?今回だけは、俺一人じゃダメみたいですわ…。」

「何も言わなくていい!チビも一緒だろ?30分だけ待ってて、ごめんなぁ、すぐに行けなくてな…、少しだけまっててな!」

「すんません。」

友人が来てくれるまでの約30分が、途方も無く長く感じられた。

「ぱぱ、まま、ねんねしたまんまだからだいじょうぶだよ、おそとであそぼう!」

嫁さんの側から離れたくない俺がいたが、娘に必要以上の心配を掛けてはいけないと思い、嫁さんの側を離れる…。

娘を遊ばせながらも、俺の心は虚ろだった…。

友人がタクシーを飛ばして病院に到着する。

「…嶋ちゃん、よく一人で頑張ったな、もう大丈夫だからな。」

「忙しいとこすんません…俺、最後の最後で、嫁さんの事守れなかった…、だらしねぇっすね…、最低ですね…俺に助けて欲しくて電話くれた筈なのに、俺気付いてやれなくて…、今日になれば絶対大丈夫ってなめてて…、嫁さんの口だけの『大丈夫』に勝手に安心してて…、で、このザマですよ…、俺しか嫁さんの気持ち拾ってあげられないのに、こんな時に限って、拾ってあげられなかった…。」

安心したのだろう…、それまで無理やり押さえ込んでいた涙が溢れ出す…。

「うん…うん…」

「嫁さん殺したの、俺っすよ!!」

「嶋ちゃん、分かる、分かるけど、違う!嶋ちゃんが精一杯、奥さん大事にしてたのを、俺は知ってる!」

「…全然足りてなかったっすよね、俺の気持ち!」

「奥さん優し過ぎたんだよ…。」

「だからこそ、無理してたのに、俺が…俺がもっと…」

「今は何も言うな…、チビの事を考えてあげよう!なっ!」

いい歳をした男が、抱き合いながら泣いている様子はさぞ滑稽だったことだろう…。

「病院の敷地から出ても大丈夫なのか?」

「少しなら…」

「何か喰ってんのか?」

「いや…。」

「チビも喰ってないの?」

「…はい…そうっすね…」

「外、行こう!」

抱っこした娘のオムツはパンパンに膨れていた…。

娘なりに色んな事を我慢していたんだと思い知らされる…。

その日に限って、お腹すいたとも、オムツ替えてとも言われていない事が、それを物語っていた…。

オムツを替えてから場所を移す。

「嶋ちゃん、一杯飲んでもいいんだぞ。」

「そうっすね…、いくら飲んでも酔え無そうだけど…。」

昼時のレストラン、娘にご飯を食べさせながら、その店で唯一のアルコールである生ビールを、あおる様に飲み続けた…。

全く味を感じないビールを、決して酔う事の無いビールを何杯も飲んだ…。

友人は、それを何も言わずに見ていてくれた…。

本当に人間の温かさに、救われた時間だった…。

この人に恩を返すまでは死ねねぇなとも思った。

霊安室に戻ると、携帯が鳴る、嫁さんの親父さんとお姉さんが病院に着く。

「すいません!!娘さん、最後の最後に守ってあげられなかったです!申し訳ありません…。」

首を横に振りながら、俺の肩に手を置く親父さん…。

嫁さんが眠っている場所へ案内する…。

お互い、言葉は少ない、ただ、意味の無い結果の報告だけをした。

少し遅れて、俺の両親がやってくる。

慰めの言葉が俺を通り抜けて行く…。

親達には勿論悪意は無い、ただ、あの日の俺には全ての言葉が、ただの『音』に聞こえていた…。

嫁さんを部屋に連れて帰る準備が出来た。

死に化粧を施された嫁さんは、血の気が失せていた事も手伝い、本当に真っ白で、綺麗だった…。

その日が土曜日だった事もあり、嫁さんの火葬は週明けまで、伸ばして貰える事になった…。

一日でも長く、嫁さんの体の側にいれる事が嬉しかった…。

嫁さんの友達にも、最期に会わせてやれる時間が出来た。

翌日は、嫁さんの友達からも話が聞けるだろう…。

今夜は、とにかく嫁さんの側にいたい。

両家の家族が眠った頃、嫁さんが好きだった酒を作り、エアコンで冷え切った嫁さんの唇を酒で湿らせる…。

「ごめんな、お前の辛さ、全然分かってあげれてなかったな。」

「本当なら、今頃、お前の事を安心させて三人のこれからを話してるはずだったんだぞ。」

「なんで、俺が一人でしゃべってんだよ…、お前もなんか言えよ…。」

「ごめんな、お前の引き出し、開けさせて貰ったぞ…、俺の書置きのメモまで取って置くんじゃねぇよ、大した事もかいてねぇのに、みんな取って置きやがって…あんなどうでもいいもんを大事に取って置かれたら
切ないだろうが…。」

「なんか言えよ…、なぁ、お嫁ちゃん…。」

「これはな、俺が勝手に思っているだけの事かも知れないけど、お前、自分がいなくなって、俺がこんなにバカみたいに泣くなんて思ってなかったろ?」

「辛いよ、生きて行かなきゃいけないのが…、お前もこんな感じで苦しかったのか?」

「チビの事はしっかり俺が面倒見るよ、お前と俺の子だもん、お前の想いは、しっかり受け止めるつもりだかんな。」

「頼む、もう一回だけでもいいから話そう…頼むからさ…」

返答の無い夫婦の会話はずっと続いていく…。

嗚咽で、俺が声を出せなくなるまで…。

翌日の嫁さんの友人達から話して貰う事になる、嫁さんの言葉で、俺の心は更に、嫁さんに惹かれて行く事になる…。

永遠に消える事の無い、想いと痛みを背負い、嫁さんが隣にいない夜は明けていく…。




後編へ続く

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  1. 2008/10/14(火) 21:31:53|
  2. メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…
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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード26)「慟哭」(後編)※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード26「慟哭」(後編)




7月2日

深夜1時頃携帯の着信音が鳴る。

嫁さんからの電話だった…。

六本木の週末にしては、客足も少ない不思議な日だった…。

嫁さんの調子が明らかに悪い事が分かっていた為、仕事の手を止めすぐに電話を取る。

「どうした!?なんかあったか?」

「……なりさん…忙しい時にごめんね…」

「大丈夫、どうした?しんどいか?」

「………」

「…どうした…?」

「…なりさん…今日は何時くらいに帰って来れる?」

「…ごめん、まだちょっと読めないなぁ…」

「そうだよね…、週末だもんね、忙しいのにごめんね…」

「出来るだけ早く帰るから、しんどい時にごめんな。」

「ううん…」

「大丈夫か?」

電話越しに嫁さんが涙声になるのが分かる…。

「…うん…」

「本当に大丈夫か?」

「…うん…」

「出来るだけ早く戻るから、とりあえず、今は寝てろ…、なっ…」

「…うん…」

「待ってろよ!ちゃんと寝てるんだぞ!」

「…うん…なりさん忙しいのにごめんね。」

「寝てろよ!本当に大丈夫だな?」

「…うん…うん…」

そこで、嫁さんとの電話は終る…。

(調子、悪そうだな…、仕事が終ったら急いで帰ろう…、今日こそ、ちゃんと仲直りして、安心させてあげなきゃな…)

幸い、その日は客足も止まり、若干のオーナーとの打ち合わせがあったものの、始発に近い電車に乗る事が出来そうだった…。

店を出て、すぐに、嫁さんの携帯に電話をしてみる。

「お掛けになった電話は…」

嫁さんの携帯の電源が切れている、普段なら絶対にあり得ない…。

なんとなく、不安が残ったが、とりあえず電車に乗る。

駅から出てすぐに、もう一度携帯を鳴らす、電源は入っていない…。

(電話に出たくないくらい調子がわりぃのかな…?今日もコンビに飯だよなあの調子だもんな…。)

帰り際、最寄のコンビニで急いで朝飯を買い、もう一度電話を入れてみる、電源は切れたまま…。

さすがに、心配になり、帰り道を急ぐ。

「ただいま」

『おかえり』の声は聞こえない…。

(寝てるのかな?)

寝室に急ぐ、眠っているのは娘だけ…、嫁さんがいない。

ダイニングに戻る、テーブルの上に嫁さんの見慣れた文字で書かれた、俺宛の手紙…。

内容は………。

「ふざけんな!!」

「どこに行った!!」

その時、風呂場から水の流れる音に気付く。

水の流れる音は、一杯になった湯船から溢れ出すお湯の音だった…。

その湯船の中には、パジャマ姿のまま、湯船にもたれ掛かり、上を向いたまま、口をあけて眠っている嫁さんの姿があった…。

「おいっ!」

「おいっ!」

「寝てんじゃねぇよ!起きろ!」

「起きろよ!!!!」

目を醒まさない嫁さんの顔を平手で何度も引っ叩いた…。

反応は無い…。

すぐに人工呼吸をした…、嫁さんが呼吸をしていない事を分かるのが怖かったから、呼吸があるかなんて試さなかった、いや…、試せなかった…。

唇を合わせて息を吹き込む…(唇が温かい!大丈夫だ!)

でも、俺が吹き込んだ息に返って来たのは、肺から漏れたと思われる『ボフッ』という音だけ…。

動けなかった…。

湯船から零れていくお湯を呆けたように眺めながら、湯船に微かに浮かぶ浮遊物を見た時、本当は気付いていたのかも知れない…。

時間にして、何分だったのか、それとも数十秒だったのか?

時間の感覚が麻痺していた事だけは覚えている。

(まだ、体があったかい、大丈夫!)

パジャマ姿のまま風呂に入っている嫁さんを湯船から引き上げようとする。

たかが、40数キロの嫁さんが持ち上がらない…鉛の様な重さを感じる。

(でも、体があったかいじゃねぇか!大丈夫!まだ大丈夫!)

救急車!

電話の受話器を握る、『119』たった3つの数字を押すのに、何度プッシュボタンを押し間違えたか分からない…。

錯乱している自分に嫌でも気付かされる…。

ようやく『119』番の番号が押せた。

「119番です、救急ですか?消防ですか?」

「嫁さんが息をしてないかも知れないんです、心臓も停まってるかも!」

「落ち着いて下さい、救急ですね?そちらのご住所は?」

「わかんねぇよ!いつもそれを教えてくれる嫁さんが倒れてんだよっ!頼むから早く嫁さんを助けてくれよっ!!」

「落ち着いて下さい、お近くに、郵便物か何かありませんか?」

「わかんねぇよ!お願いだから早く助けてやってくれよ!」

「ご主人、免許証はお持ちですか?」

「ある!」

「そこにご住所が書いてありませんか?」

そこで、はじめて、住所を伝える事が出来た…。

「分かる範囲で構いませんので、奥さんの状態を教えて頂けませんか?」

その時、はじめて、テーブルの下に転がっていた大量の薬のからが目に入った…。

その中には、嫁さんの向精神薬や睡眠薬に混ざって、俺の頭痛用の劇薬扱いになっている薬をあけた物も含まれていた…。

いつか、嫁さんに向かって言った「おれの薬、飲むと体にすげぇ負担が掛かるんだわ、間違ってもお前は飲むなよ」という言葉を思い出し、やり切れない気持ちで一杯になった…。

電話で、薬の事と風呂場の状況を話す。

「すぐに向かいますので、お待ち下さい。」

救急隊の方が来るまでの時間、俺に何が出来るのか必死で考えた、だが、俺に出来たのは、風呂のお湯を抜く事と嫁さんの手紙を読み返す事そして、動かない嫁さんの側にいる事くらいだけだった…。

数分後、救急隊の方達が到着、嫁さんの救急処置をし始める、何もしてあげられない自分が歯痒い…。

「嫁さん助かりますよね!」

「…今、全力を尽くしています、このまま病院に搬送する事になると思いますので、ご主人もすぐに出れる準備をお願いします。」

その時点の時間が朝の7時前、普段ならどんなに騒がしくても眠っているはずの娘が、普段とは違う騒がしさと雰囲気からか、目を擦りながら
起き出して来る…。

「ぱぱ、おかえり!まま、どうしたの?おびょうき?まま、だいじょうぶかな?」

「起きたのか、ママちょっと具合悪くなっちゃったみたいなんだ…、大丈夫だから心配しなくていいんだよ。」

「ままにあたまつめたくするのもってきてあげようか?」

「…ありがとう、でも、今日はいいかな、それよりさぁ、これから、ママと一緒に病院に行くんだけど、お着替えしてくれるか?」

「うん!いいよ、きゅうきゅうしゃでいくの?」

「うん、そうだよ、だから、はやく着替えような。」

「ちょっとまってね、ままにがんばってっていってくるから!」

「うん、お前が頑張れって言ってくれたらママも元気になるかもな、言って来てくれる?」

「うん!ままがんばってね、なおったら、ごはんつくってね。」

娘の存在が、自分に少しの平静さを取り戻させてくれた…。

娘を着替えさせ、オムツを換え、救急車に乗る。

言葉が出ない俺を見た娘が一言。

「ぱぱもおびょうきなの?ままがねんねしてるから、ぱぱ、おびょうきになんないでね。」

「うん、大丈夫だよ、ごめんな、パパがしっかりしなきゃな!ありがと。」

何も分からないはずの2歳半の娘に励まされながら、某大学病院に到着、すぐに緊急治療室に搬送され、嫁さんの緊急処置が始まる。

娘を抱きかかえたままの俺に、看護師さんが、「娘さんお預かりしましょうか?」と声を掛けてくれる。

電気ショックや胃の洗浄をするのだと思うと、それを娘に見せてはいけないと思った。

娘を預かって貰い、嫁さんの元へ戻る、ずぶ濡れのパジャマを脱がされ、素っ裸の嫁さんが、心臓マッサージや、電気ショック、口からは管で何かを吸い出されていた…。

情けない話だが俺は、その光景を直視出来なかった…。

看護師さんに「気持ちを落ち着かせたいので、少しの間、外でタバコを吸わせて頂けないでしょうか?」と尋ねると、救急隊の方を一人付き添いに付けてくれた。

嫁さんの側を離れ、背中を向けた瞬間、俺の中の感情がはじけた…。

処置をしてくれている医師の方々に向かい叫んでいる俺がいた。

「俺の頭でも、腕でも足でも、心臓でも、どこでもいいから好きに使ってくれて構わねぇから!俺なんてどうなったって構わないから、俺を殺してでも、嫁さんを助けてやって下さい!お願いします!」

医師達は、無言だった…。

側にいてくれた、救急隊の方が「先生達は、今、全力で奥さんを助けようとしてくれてます、ご主人も一度落ち着く為に、タバコ吸いに行きましょう。」と俺を外に連れ出してくれた。

喫煙所まで歩く気力の無かった俺は、救急隊の方の計らいで、救急患者用の出入り口の前でタバコを吸わせて貰っていた。

1本、2本、何も考えられずに、無意味にタバコに火を付け続けた…。

嫁さんが病院に運び込まれてから、1時間に満たない頃だったと思う、一人の看護師さんが俺の側にやって来た。

「嶋村様、奥様の事なのですが…、気持ちの準備をなさって置いて下さい…。」

「………。」

どこかで覚悟はしていた、ただ、病院に運べば、助けてくれるんじゃないかとも思っていた。

本当は、瞳孔が開いている事も、心臓が動いていない事も、呼吸をしていない事も、風呂にほんの少しだけ流れきらずに浮かんでいた浮遊物が嫁さんの体から出た排泄物だと言う事も気付いていた…。

それでも、人工呼吸で、息を吹き込んだ時に触れた嫁さんの体温を信じたかった…。

風呂にはお湯が流れ続けていたのだから、体が温かいのは当然、それも実は気付いていた。

…でも、でも、あの時だけは病院は、医者は万能だと信じたかった…。

(もう1本だけタバコに火を付けたら、嫁さんの側に行こう…)

そう思っていた時に、一般の救急外来の付き添いの人が通りがかりに、「お前、ここをどこだと思っているんだ?タバコは喫煙所で吸え!」

当然の事を注意された。

全く自制が効かなかった…。

くわえていたタバコを投げ捨てると同時に、その人を追いかけ、肩を叩き、俺の方を向かせた瞬間に殴りに行っていた…。

1発、2発、……、俺の呼吸が止まるまで殴り続けた、俺に非がある事は分かっていた、でも、自分を抑える事が出来なかった…。

俺に付き添ってくれた救急隊員の方が、騒ぎに気付いて戻って来たのだろう、倒れ込んだ相手の頭を踏みつけようとした瞬間に、俺を羽交い絞めにして止めてくれた…。

「嶋村さん、事情は説明して置きますから、早く、奥さんの所に行って下さい!」

今でも、あの救急隊員の方には感謝しているし、殴り倒してしまった相手にも、申し訳無かったと思っている…。

ただ、あの時は、完全に自制心と言うものが俺には欠落していた…。

救急隊員の方に促され、嫁さんの側に戻る。

そこで待っていたのは、きれいにシーツを掛けられたまま横たわる嫁さんの姿だった…。

嫁さんの緊急処置を担当してくれた医師が歩み寄って来る。

「最善は尽くしましたが、奥様、残念ですが、お亡くなりになりました、死亡のご確認をお願いします。」

俺の視界から色が消えた…。

目に映る全ての物がモノクロに見えた…。

「すいません、少しだけ時間を頂けませんか?」

「分かりました。」

処置室から出て、表に向かう…。

モノクロの視界の中、なるべく人のいない場所へ向かおうとした…。

少なくとも、娘の目にはとまらない場所へ…。

だが、足が途中で止まってしまった、俺の意思とは関係無く…。

病院の通用口、人は数え切れないほど通る…。

なのに、そこで、俺の足は言う事を利いてくれなくなった。

足が止まったその瞬間から、涙が溢れ出した…。

『大人』と呼ばれる様になってから、はじめて、人前で声をあげて泣いた…、誰憚る事無く、叫ぶ様に泣いた…、そしてその涙は声をひそめだし、唸るような慟哭へと変わって行った…。

涙腺以外の感覚器が全ての機能を失ってから、どれだけの時間が経ったのか分からない…。

何も見えなかった、何も聞こえなかった、その感情が悲しみなのかさえ分からなかった許容量の限界を超えた悲しみは一時的に『悲しい』と言う感情さえ無くすと言う事を経験した…。

不意に、嫁さんを一人にしている事に気付く…。

涙は止まっていた…。

使命感…。

それだけが、それからの数ヶ月、俺を動かしてくれていたのだと思う…。

医師の元へ向かう…。

「嫁さんの死亡確認、させて頂きに参りました。」

「死因は、薬物の大量摂取による心臓機能の停止、自殺と言う扱いになりますので、警察の取調べが入るかと思われます、なお、死因について詳しく知りたい場合は、司法解剖の形になりますが如何致しますか?」

「いえ、これ以上、嫁さんの体に傷を付けたくないので、それで結構です。」

「それでは、ただいまの時間で、死亡確認とさせて頂きます。」

「いくつか、お伺いしても宜しいですか?」

「私がお答え出来る範囲でしたら。」

「嫁さんは苦しんで逝ったんでしょうか?」

「あれだけ大量の薬物を一度に飲まれておりますので、最初の数分で意識が混濁してくるはずなので、奥様は、苦しむ間もなかったと思います、苦しんで亡くなった方はこんなに柔らかい顔にはなりませんよ。」

「ここに来た時には、もう手遅れだったんでしょうか?」

「こちらに、いらした時には、すでに、心停止から2時間以上が経っていましたので119番にご連絡された時点で、すでに、脳の機能も停止していたと思われます。」

「そうですか…、お世話になりました。」

「奥様をご自宅までお連れするまで、一度別室にお運び致しますが、よろしいですか?」

「少しだけ、お時間頂けませんか?娘にもママの顔見せてあげたいので…。」

預かって貰っていた娘を引き取りに行く…。

「ぱぱ!ままおっきした?」

「うーん、まだなんだ…でも、ママに会いに行こう。」

「うん!いく!」

娘を抱っこしながら、嫁さんが眠っている場所へ向かう。

「まま、まだ、ねんねだね。」

「うん、ママさぁ、今まで、いっぱい、いっぱいお前とパパの為にご飯作ってくれたり、お洗濯してくれたりしてたでしょ?」

「うん!すべりだいもやってくれた!」

「そうだよな、それでね、ママ疲れてさぁ、眠くなっちゃたみたいなんだ、今も、ねんねしてるでしょ?」

「うん。」

「だからさぁ、ママこれからゆっくりねんねさせてあげような。」

「いつまで、ままねんねしてるのかなぁ?」

「これから、ずっとなんだ…、でも、今までずっといっぱい、いっぱい頑張ってくれたから、ずっと、ゆっくりねんねさせてあげような。」

「うん、いいよ、ままつかれてねむくなったんだもんね、でもごはんはどうするの?ぱぱがつくるの?」

「うん、パパ頑張るからな!だから、ママにはゆっくりねんねして貰おうな、ママにおやすみって言ってあげな。」

「まま、おやすみ、ちゃんとねんねしてね。」

娘と一緒に、俺も嫁さんにおやすみを言った、そして冷たくなった嫁さんにキスをした…。

鼻から一筋の血が流れた…。

嫁さんの『死』という現実を、正面から受け止めるには、まだまだ時間が掛かる事は分かりきっていた…。

後悔や、自責の念に苛まれる事も覚悟していた…。

それでも、あの日の俺を動かしてくれたのは嫁さんからの最期の手紙であるテーブルの上にあった遺書だった。

『なりさん、今日までありがとう。
〇〇〇(娘の名前)をお願いします。
二人の幸福を心から祈っています。
たくさんの幸せを与えてくれた事に深謝。
さようなら。
       〇〇〇(嫁さんの名前)


この後、嫁さんの自殺の真意や、俺や娘への想いが様々な人達との会話や、遺留品から分かっていく事になる。

俺が、更なる後悔や自責の念に駆られる事になるのは、これからだった。



続く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回の日記は、自殺を肯定するものでは決してありません。

また、今回の日記では、現実の出来事を追っただけで、私のその時の気持ちや、今だからこそ出来る考察も殆ど出来ていません。

次回以降の日記で少しづつ掘り下げて行きたいと思っています。

今は、少しおやすみを下さい。

ごめんなさい。

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  1. 2008/10/08(水) 00:28:57|
  2. メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…
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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード26)「慟哭」(前編)※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード26「慟哭」(前編)



全ての、『これから』が道が途切れる事無く続くものだと信じていた…。

例え、どんな『If』の世界があったとしても、そこから『一番大切な人』がいなくなる『If』の世界はあり得ない…、筈だった…。



6月29日
俺が働き出せた事によって、平穏な家庭を取り戻せたと思いこんでいたあの日…。

一つの歯車が狂いだした…。

いつもの様に仕事に出かける身支度を始めた俺に、ここ数日鬱の状態が酷かった嫁さんが話しかけてくる。

「なりさん、何もしてあげれなくて、ごめんね…、本当に、ここんとこ動けないんだ…。」

「気にすんな、もう慣れてるよ、無理しないで休んどけ。」

そう、一緒に過ごした約五年の間に、嫁さんの調子が悪いのは、その日によって波はあるものの『いつもの事』に俺の頭の中で変換される様になってしまっていた。

「でも、今回のは、結構しんどいよ、これ、いつまで続くのかなぁ?」

確かに、その日までの数日は家事もほとんど出来ておらず、娘の世話を見るのが手一杯の状態な事は、俺も知っていた。

「そのうち落ち着くんじゃねぇか?少しゆっくりしてさ、チビにだけは何か喰わしてやっててくれや、俺のは別に何も無くていいからさ…。」

俺の方も、ある程度新しい仕事の環境に慣れて来たとはいえ、責任のある、立場から開放された訳でもなかった為、いつもピリピリした雰囲気を漂わせていた時期でもあった、その不安定さが、俺に、不要な一言を付け加えさせる。

「でもさ、そろそろ、カップラーメン以外のもんも喰いたいな、一日の間に飯だけでも炊けるくらい調子が戻る時って無いの?チビにはなんか喰わしてんだろ?」

「やっぱり…、なりさんも分かってくれてないのかな…?」

「…わりぃ、言い過ぎた、俺も、まだ、ストレス抱えっ放しでイライラしてた、飯も気にしなくていいよ。」

「なりさんはいいな…、うらやましい…。」

「何が?何で?」

「それが、いい事でも、悪い事でも、感情にして表に出せるから。」

「お前はそれが下手って言うか、上手くできねぇもんな…、て、それは、当て付けか?」

「そんなんじゃない!本当にうらやましいの、わたしには持て無いスキルだから…。」

「また、そうやって、なんでもすぐに諦める、お前のわりぃ癖だぞ、それ…。」

「でも、本当に先が見えないのって辛いんだよ、今回のは特に辛い、本当にわたしが、なりさんとチビちゃんの事分からなくなったら、どっかの施設に預けてね…、そんな風になってまで、二人に迷惑掛けたくないから…。」

「嫌だって言ったよな、この前、いい加減しつこいぞ!迷惑、迷惑って今、お前がふさぎ込んで、なんにも出来ないって聞かされ続ける方がよっぽど迷惑だよ!少しでも、良くなる事考えろ!」

「それが出来たら、病気になんかなってないし、なりさんのご飯も毎日作れてるよ!それが出来ない事がどれだけ辛いかなりさん分かってないでしょ!!もう嫌だ!!もうどうでもいい!!もう死にたい!!」

「ふざけんな!!おめぇだけが辛いと思ってんじゃねぇよ!死にたかったら勝手に死ね!ただ、誰にも迷惑掛けんなよ!おめぇは母親だって事忘れんなよ!!」

「分かった…、もうどうでもいい、限界…。」

おもむろに立ち上がり、マンションの三階の窓から身を乗り出そうとする嫁さんを、強引に引きずりおろす。

「俺が、本気でお前に死んで欲しいなんて思うと思ってんのか!?」

「もう、なりさんの重荷になりたくない!なりさんだって、わたしがいなければ、こんな苦労しなくて済むでしょ!それに、わたし、いつ、なりさんの事分からなくなるか分かんないんだよ!それが、一番怖い!」

「いいから、今は落ち着け!!」

「だって…だって…。」

泣きじゃくる嫁さん…。

「だってじゃねぇよ!お前に死なれたらこの先、俺はどうやって生きて行けばいいんだよ!俺の生きてる目標勝手に奪わないでくれ!」

「…なりさん…、ごめんね…、もうお仕事行かなきゃいけない時間だよね、わがまま言ってごめんね…。」

「何言ってんだよ、今のお前を放って置いて仕事なんかに行けるかよ!今日は休ませて貰う様に電話入れて来るから待ってろ。」

「なりさん、大丈夫、なりさんがいないと、仕事回らないんでしょ?もう本当に大丈夫だから…。」

「いや、今日は一緒にいる、少し待ってろ。」

「ダメだよ、なりさん、新しい職場で責任職でしょ、そんな人が、まだ一ヶ月も働いていない職場なのに休んだらダメだよ、これから誰がわたし達にご飯食べさせてくれるの?(笑)」

「本当に大丈夫か?絶対おかしな事考えないって約束できる?」

「絶対!、約束する!だから、今日は仕事に行って、なりさんがここまで一所懸命作った信用なくしちゃダメだよ、お嫁ちゃんは、なりさんが頑張ってんの知ってるんだぞ(笑)だから、今日はお仕事行って、わたしは大丈夫だから…、ねっ!」

「絶対に約束できるな?明後日は休みだから、そん時に、もう一回、ゆっくり話そうな?」

「うん。」

「分かった、じゃぁ、今日は、留守番頼むな?留守番だから、ちゃんと俺が帰って来た時にいなきゃダメなんだからな!」

「うん、『留守番』してる。」

その日は、嫁さんの言葉に従い、仕事に向かう…。

夫婦喧嘩…、いつも嫁さんが言っていた言葉が頭をよぎる…。

「なんかね、うちだけみたいだよ、喧嘩した後に、一杯話し合いするの…、みんなのとこではしないみたい、やっぱりうちら変わってるんだね。(笑)」

少し怪訝そうに、でも誇らしげに、その事を話す嫁さんの笑顔が目に浮かぶ…。

そうだ、話そう、もっとゆっくり、時間をかけて…。

6月30日
俺の帰りが遅かった事と嫁さんが風邪気味だった事もあり、嫁さんとの会話は少なかった…。

「ただいま、大丈夫だったか?」

「うん、ちゃんとお留守番してたよ!」

「ありがと、給料貰って来たぞ、これで、今月はよろしくな。」

俺が貰った給料は、一度全額嫁さんに渡すのが、嶋村家の自然に出来たルールだった。

「ちびちゃん、パパ帰ってきたよ、あと、お仕事のお金も貰って来てくれたよ、今月もごはん食べれるね、パパにありがとうしようね。」

「うん、ぱぱ、ありがと!」

「おう!なぁ、チビ、ママ最近調子よく無さそうだから、パパがいない時はお前がママの事頼むな!」

「うん!ままが、ぐあいわるいときは、おくすり、わたしたりしてるからだいじょうぶだよ!」

「うん、頼むな。」

「ママは?調子どうだ?」

「うーん、ちょっとね…、風邪引いちゃったみたい、だから、チビちゃん保育園お休みさせちゃった。」

「そっか、だからいるんだね、まぁその方が安心だわ(笑)」

「そうだね。(笑)」

「無理しねぇで横になってな、俺も風呂入ったら横になるからさ。」

出勤時間、二人に見送られ、仕事へ。

前日の事にはあえて触れずにいた、休日にゆっくり話そうと心に決めていたから…。


7月1日

出勤時間近くに目を醒ます。

嫁さんは、風邪の具合もそうだったが、メンタル面の不調が、明らかに表情に表れていた。

「どうした?お前、今日調子良くないだろ?」

「うん、あんまり良くは無いかな…。」

「無理すんなよ、何かあったら、必ず連絡よこせよ!」

「うん…。」

「明日は休みだからさ、それまで待って、なっ?」

「…うん…なりさん、なんか怖いよ…、いろんな物が見えたり、変な音が聞こえたりするのが治まらないの…、わたしも、なりさんとかチビちゃんの事分かんなくなっちゃうのかな?」

「一人で大丈夫か?」

「…うん…大丈夫…。」

「お前、今日は、明らかに調子悪い時の顔になってるからな、本当に、何かあったら、電話しろよな!」

「…うん…。」

布団から抜け出せないでいる嫁さんに、声を掛け職場に向かう…。

心配はしていたが、これまでにも、何度と無く見て来ている、嫁さんの不調時の虚ろな目と表情…。

今日さえ乗り切れば、フォローを入れてやれる、だから大丈夫、そう自分に言い聞かせ、仕事に集中する。

7月2日

深夜1時頃携帯の着信音が鳴る。

嫁さんからの電話だった。



後編へ続く



※この日記を読んで下さった皆様へのお願いです。

後編更に重い話になりますが、よろしければ後編もお読み下さい。
後編には何かしら、伝える意味がある文章を書き上げるつもりです。

時間の都合上、本日は前編のみのUPとなってしまいましたが、前編のみ、お読み下さった方は非常に読後感が悪い事と思います。
ノンフィクションの為、私の文章でご気分を害された方もおられるかと思いますので、先んじて、お詫び申し上げます。

また、後編のUPが終るまで、お待たせしてしまっている、メッセージの返信、お時間の猶予を頂ければ幸いです。
誠に勝手なお願いながら、事情を察して頂けると嬉しいです。(苦笑

必ず、近日中に後編UP致しますので、どうかよろしくお願い致します。

テーマ:たいせつなひと。 - ジャンル:心と身体

  1. 2008/10/04(土) 20:34:43|
  2. メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…
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近況報告です。

NPOの認証が下りてから、様々な施設や、公共機関にご挨拶回りをしています。

また、会議や、これから展開して行く活動の報告会などで、mixiにじっくり、ログインも出来ない日が続いていました。

NATURAL REBORN、皆さんのおかげで、少しづつですが、確実に前進しております!

ただ、外回りが多い為、PCを立ち上げられない日も多く、相変わらず(汗)皆さんからののメッセージへの返信滞っています。(滝汗)

申し訳御座いませんが、もう少しだけお時間を下さい。

また、嫁さんとの日記ですが、週明けまでに、UP予定です。

前回も書かせて頂きましたが、内容的には、かなり重いものになります。

重ねてになりますが、メンタル面が不安定な時期の方は、ご注意下さい。

と、いった所でTIMEUPです。(汗)

返信や、コメントの遅れなど、皆さんには、ご迷惑をお掛けしておりますが、もう少しで色んな事が落ち着いて来そうですので、寛大な目で見てあげて下さい!(切実)

では、今日もお出掛けに行ってきます。

テーマ:カウンセラー - ジャンル:心と身体

  1. 2008/10/03(金) 17:44:03|
  2. MENTAL REBORN
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