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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード13) 「受胎告知」(前編)

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード13「受胎告知」(前編)


夏が近づいて来ていた、窓を開け放したままで、眠れる季節、夜風にだけは、微かに寒さが残る…、そんな季節だった。

仕事帰りの終電前、新宿駅の西口ロータリー、ビールをコンビニで買い込み、それぞれの終電まで仲間と楽しい酒をあおる、そんな事が習慣になっていた、世の中には、新婚と呼ばれる時期、もう少し早く帰ることも出来たが、嫁さんからの言葉。

「なりさんはそれくらいしか、今、息抜き出来る事ないでしょ?、だったら、ちゃんと帰って来てくれればいいよ!、ただ、タクシーはたまにしかダメだからね!お金無いんだから(笑)」

当時、嫁さんは、 体調不良から、(精神的には安定していた様に思う)仕事を辞め、専業主婦をやっていた、元来、外で働く事が好きだった嫁さんは、体調が戻ったらすぐに働くと言っていたが、「せっかく、籍を入れたんだから、少し身体休めたら。」という、俺の言葉に、渋々従っていた感じだったが…。

(今にして思えば、外で働くのが好きというより、外で働く事自体が嫁さん自身のアイデンティティだったのではないかと感じる、仕事自体は、嫁さんの持っていた、事務系の高いスキルの為、すぐに見つかるが、鬱の為に出社率が下がり、長くは同じ職場で働けない事は自覚し、割り切っていた。)

「大丈夫!わたしは、お気楽な専業主婦で、家で好きな事やっているんだから、なりさんも、たまには、息抜きしなきゃだもんね!(笑)」

あの笑顔を嫁さんがどれだけの想いと、覚悟で作っていたのかを、今になって思い知る、「無知は罪である」と今更痛感させられる…。

あの笑顔に甘え、日々終電帰りを繰り返していたある夜。

「なりさん、わたし明日、病院に行って来るから、なりさん起きた時もういないから、ちゃんと自分で起きてね。」

「分かった、いつもの病院?」

「それと、もう一つ…」

「どっか悪いの?」

「婦人科に行って来る。」

「そっか、気を付けて行って来いよ。」

「うん。」

「じゃぁ、飯食ったら、先寝てな、明日早いんだろ?」

「そうする、ちゃんと自分で起きるんだよ~(笑)」

「分かった、分かった(苦笑)」

普段と何も変わらない、日常の会話、明日知らされる事になる『奇跡』に、何も気付かないまま眠りに堕ちる…。

昨今持て囃されている、スピリチュアル的なもの、俺は昔から、否定も肯定もしない、そのスタンスは今でも変わらない、だから、これから書き綴る文章は、俺に起きた実体験の一つとして、書き綴る。

仕事前、起きたい時間に目覚まし時計を掛けて眠る、目覚まし時計より早く起きる事は、当時は、殆ど無いに等しかった、一番守りたいものが一番近くにいてくれる安心感が、俺の眠りを深くしてくれていたんだと思う…。

……目覚ましの音は聴こえない、眠っている俺の肩を誰かが叩く、二度、三度…、嫁さんが早く帰って来たのか…?

そう考えた時に、違和感に気付く、ハッ!として目が覚める、そこには誰もいない…、だが、確かに肩に残る感触、違和感の正体は、その、手の大きさだった、明らかに、嫁さんの手の大きさではない、もっと、もっと小さな手…、子供の手、更に言えば、新生児くらいの手の大きさで肩を叩かれた感触が、覚醒した後も、しっかり残っていた、こういった経験には全く縁が無かった俺だが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった…。

その日は臨時休業になってしまった目覚まし時計の電源を切り、仕事に向かう準備を進める…、若干の不思議さを残して…。

職場で、仕事を始める、朝の出来事はすでに、意識に無かった。

夕方近くに、不意に職場の電話が鳴る、同僚が電話を取ったのが分かった、同僚が小走りに俺に向かって来る。

「嶋村さん、奥さんから電話ですよ。」

「嫁さん?」

「はい。」

「分かった、ありがと。」

「もしもし、どうした!?」

「あのね、今日、病院行くって言ってたじゃない…。」

「うん、それで、どっか悪いのか?」

「ううん、違う、あのね…あのね…」

「だからどうした!?」

「なりさんの赤ちゃんができたの…」

「ほんとに!」

「うん…、なりさん喜んでくれる?、わたしどうしたらいい?」

「今どこにいる?、家か?」

「うん…、わたしどうしたらいいんだろう?、なりさん、心細いよぅ…」

「30分待ってろ、すぐ戻る、安心して待ってろ!いいな?」

電話を切り、職場の責任者に経緯を話す、嫁さんが不安定な事も含め。

「急で申し訳ありませんが、今日、これから、お休みを頂けませんか?」 

「急だからねぇ…」

「無理なら、クビで構いませんから!上がります。」

「ちょっと待って、明日は定時に来てくれる?」

「お約束します。」

「じゃぁ、今日だけ特別、給料は1日分引くけどいい?」

「好きにして下さい!、ただ、皆さんに勝手言って、申し訳御座いませんとだけ伝えておいて下さい。」

(今の嫁さんを1人にして置きたくない…)
挨拶もそこそこに、俺は電車に飛び乗った。




後編へ続く
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テーマ:たいせつな人 - ジャンル:日記

  1. 2008/01/31(木) 11:44:54|
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