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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード22)「退院と転院」

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。



エピソード22「退院と転院」



「明日わたし、退院するんだけど、覚えてくれてるよね?」

「忘れる訳ねぇだろぉが、覚えてるよ。」

「午前中だから、寝坊しないでよ!(笑)」

「了解、分かってる、お医者さんとも話さなきゃだしな…。」

嫁さんからの確認の電話、嫁さんが、電話を掛ける事が出来る時間は限られている…。

この電話を受けたのも、俺がまだ仕事中だった。

嫁さんが入院した日から、職場のオーナーに、包み隠さず事情を話し、勤務中の携帯電話の使用許可を取り付けておいた…。

「俺の嫁さんは精神病だから。」

俺に近しい全ての人に、嫁さんの病気の事は話していた。

そして、もう一言、「だけど、俺にとっては最高の嫁さんなんだ。」と言う言葉を添える事だけは、忘れなかった。


嫁さんの退院予定日が来た。

嫁さんの担当ドクターと話す日でもある。

考えてみれば、お医者さんと直接話す機会なんて、持とうとしていなかった自分に気付く…。

(今日は久しぶりに、腹を据えて話を聞こう。)

そう思いながら、嫁さんを迎えに病院へ向かう…。

約束の時間より、気持ち早めに病院に到着…。

(あんまり早く着くと、何となく照れくせぇな…)敷地内の喫煙所で時間調整し、数分遅れで病棟に向かう、ガラス越しに、入院用のパジャマから、普段着に着替えた嫁さんが、笑顔で小さく手を振る。

いつもの、身分確認を済ませ、嫁さんの待つ、ガラスの向こうへ…。

「おし!迎えに来たぞっ!ほとんど遅刻もしなかっただろ?」

「うん、ちゃんと早く来てくれて、外でタバコ吸って待ってたもんね(笑)」

「もしかして…、見えてたの?」

「うん。」

いたずらっ子の様な笑顔を見せる嫁さんに、色んな事を見透かされている様で、正直照れくさかった…。

「…でっ、ドクターと話すのって何時からだっけ?」

とりあえず話をすり返る。

「もう少し待ってて、わたしが話してから、なりさんと二人で話すんだってさ、もう少しで呼ばれると思うよ。」

それから、嫁さんが診察室に呼ばれるまでの間、入院中に嫁さんがお世話になった患者さんに、退院のご挨拶をして回る事に出来るだけの時間を使った。

看護師さんが嫁さんを呼びに来る。

「じゃ、なりさん、先に行って来るね。」

「あいよ。」

十数分後、嫁さんが診察室を出て来る、微かに不満な表情を残して…。

「何か言われたの?」

「うーん…後で話すよ…、なりさん、ドクターが呼んでるよ。」

「分かった、とりあえず、話してくる、話は後でゆっくり聞くからな、ちょっと待ってて。」

診察室に入りドクターと向かい合う。

「ご主人様ですね?私、奥様の担当医の〇〇と申します。」

「妻がお世話になりました、ありがとう御座います。」

「これから、お話するのは、奥様の退院後の諸注意なのですが、ご質問がありましたら、何でも、お聞きくださいね。」

「はい、よろしくお願いします。」

それから、暫くの間、退院後の養生の仕方や、薬の飲み方の注意、そして、嫁さんが、完治した訳では無い事を忘れないで欲しいと言う様な話をされた。

「何かご質問はございますか?」

「はい、嫁さんのリストカットの事なんですが、あれは、無理にでも止めさせた方がいいんでしょうか?」

「出来る事なら、切らないに越した事は無いんですけどねぇ…」

「そうですよね、ただ、私自身も、妻に四六時中付きっ切りって訳にも行きませんし、妻自身も、私や娘に見られるのは嫌なようで、全部を止める事は、物理的に不可能なんですよね、どうしたらいいのでしょうか?」

「…医者として、これを言うのが正しいのかは分かりません…ただ、リストカットをする行為自体が、奥様の逃げ道になっているのも確かです、幸い、奥様の場合、切り傷も浅いですし、理性が残った状態で切っているようなので、「どうしても」と言う場合に限り、許してあげてもいいのかなと私は考えています。」

「そうなんですね…、逃げ場が無くなるのは辛いですもんね…ただ、あの傷跡を見ると、やっぱり、悲しい気持ちになります…、やっぱり、俺が守りきれてないんじゃないのかなって、思っちゃいますね…。」

「ご主人様、それは、ご主人様が思っている気持ちをしっかり奥様に伝えてあげて下さい、そのお気持ちが奥様に届けば、リストカットの回数も減ると思いますよ。」

「はい、分かりました、やれるだけの事はやってみます。」

ここで俺の中で、一つの誤解が生じていた、リストカットは、容認しても良い事、後でフォローを入れれば問題無い…。

今にして思えば、そんな事はありえない、リストカットをしなければストレスが抜けない状態まで放って置いてフォローを入れるのではのでは無く、ストレスが飽和状態になる前に、少しづつでも、フォローを入れてあげるのが、生活を共にしている者の務めだった筈だと、今は考える…、精神疾患と長く付き合っている間に誰もが必ず陥ってしまうであろう、エアポケット…、悪い意味での「慣れ」の時期だったのだろうと思う…。

「ご主人様、他にご質問は?」

リストカット以外にもいくつか退院後に気を付けなければいけない事を聞き終えていた。

「はい、これ位でしょうかね、ありがとう御座いました。」

「後、奥様から、この病院への転院のご希望が出ておりましたが、ご本人にもお伝えしましたが、一度、今まで通われていた病院へお戻りになって、主治医の先生ともご相談された上で、正規の手続きを取って頂かないと、転院は出来ませんので、ご主人様も、奥様の相談を聞いてあげて下さいね。」

「そうか、それでさっき、嫁さん難しい顔をしていたんですね…分かりました、本当に、妻の入院中はお世話になりました!今後、妻が通院するような事があれば、またよろしくお願い致します。」

「奥様大事にしてあげて下さいね、気丈ですけど、繊細な方ですから。」

「はい、肝に銘じておきます、ありがとう御座います、失礼致します。」

診察室を出るとすぐに、娘を抱いた嫁さんが駆け寄ってくる。

「どうだった?」

「まぁ、色々な…、まぁ、必要な事は大体聞いて置いたから、安心して帰って来い、この子も待ってるからさ、なっ!」

「うん、分かった、なりさんありがとう。」

「どれ、退院の準備は?」

「うん、もう殆ど終ってるよ、後は病室から運ぶだけ。」

「よし!じゃ、行こうか?」

病室には、嫁さんの入院仲間が沢山集まっていた、嫁さんの退院を祝うと同時に、寂しくなる気持ちを必死に押し殺しているのが、俺にも分かった…。

「ご主人さん、荷物一人で持つのたいへんでしょ?私手伝いますよ!」

そう言い出してくれたのは、統合失調症と拒食症を併発している10台の女の子だった。

明らかに、40キロ台前半の細い体で、荷物を運ぼうとしてくれている。

その子の優しさに嬉しさと同時に、心配にもなってしまう俺がいる、どう声を掛けていいのか戸惑っているのが伝わってしまったのだろう。

「私、こう見えても、力持ちなんですよ!(笑)大丈夫ですから、お手伝いさせてください。」

「ありがとう御座います、じゃぁ、これだけお願いできますか?」

女の子の気持ちを無下にしない為に、比較的軽そうな物を一つ持って貰う、一生懸命荷物を運ぶ女の子と荷物を抱えた俺と嫁さんの後ろから、見送りをしてくれようと、多くの患者さんが着いて来てくれる。

病棟内を隔てるガラスの扉の前、嫁さんが、見送りに来てくれた患者さん達と、挨拶を交わしていく、ガラスの扉をくぐる頃には、ほとんどの患者さんが涙を浮かべている…。

嫁さんも涙目。

嫁さんの人間性が良く分かる、退院の光景だった。

病院の敷地を出て、タクシーを捕まえる…

両手一杯の荷物を抱えた俺、娘を嬉しそうに抱っこする嫁さん…。

やっと、「日常」が帰って来た。

「なりさん、ありがとう、今日は、久しぶりに晩御飯頑張って作るね!」

「今日はいいよ、退院祝いだ、外で喰おうや」

「いいの?」

「うん、お前の味噌汁は明日以降の楽しみにして置くわ(笑)」

「じゃぁ、明日は絶対わたしが作るね!とりあえず、荷物置きにお家帰ろうか?」

「そうだな。」

タクシーがマンションの前に着く。

部屋に帰って荷物を置き、改めて嫁さんと向き合う。

「おかえり。」

「ただいま、なりさん迷惑掛けてごめんね。」

「ちゃんと帰って来たから、許してやるよ!(笑)」

「やっと、帰ってこれたぁ、わたしのお家に(笑)」

笑顔のよめさんをそっと抱き寄せる…。

「お帰り、帰ってきたばっかりなんだから、しばらく無理すんなよ…。」

「ありがとう…、やっぱり安心するなぁ…、なりさんの側…、これからもよろしくね…。」

「おぅ、俺の方こそよろしくな…。」

そこで、ドクターが言っていた、嫁さんの転院の希望を思い出す。

「そう言えば…お前さぁ、病院変えたいんだって?」

「…うん、そうなんだ…。」

「なんで?」


続く
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テーマ:たいせつなひと。 - ジャンル:心と身体

  1. 2008/09/08(月) 16:35:22|
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