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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード26)「慟哭」(後編)※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。




エピソード26「慟哭」(後編)




7月2日

深夜1時頃携帯の着信音が鳴る。

嫁さんからの電話だった…。

六本木の週末にしては、客足も少ない不思議な日だった…。

嫁さんの調子が明らかに悪い事が分かっていた為、仕事の手を止めすぐに電話を取る。

「どうした!?なんかあったか?」

「……なりさん…忙しい時にごめんね…」

「大丈夫、どうした?しんどいか?」

「………」

「…どうした…?」

「…なりさん…今日は何時くらいに帰って来れる?」

「…ごめん、まだちょっと読めないなぁ…」

「そうだよね…、週末だもんね、忙しいのにごめんね…」

「出来るだけ早く帰るから、しんどい時にごめんな。」

「ううん…」

「大丈夫か?」

電話越しに嫁さんが涙声になるのが分かる…。

「…うん…」

「本当に大丈夫か?」

「…うん…」

「出来るだけ早く戻るから、とりあえず、今は寝てろ…、なっ…」

「…うん…」

「待ってろよ!ちゃんと寝てるんだぞ!」

「…うん…なりさん忙しいのにごめんね。」

「寝てろよ!本当に大丈夫だな?」

「…うん…うん…」

そこで、嫁さんとの電話は終る…。

(調子、悪そうだな…、仕事が終ったら急いで帰ろう…、今日こそ、ちゃんと仲直りして、安心させてあげなきゃな…)

幸い、その日は客足も止まり、若干のオーナーとの打ち合わせがあったものの、始発に近い電車に乗る事が出来そうだった…。

店を出て、すぐに、嫁さんの携帯に電話をしてみる。

「お掛けになった電話は…」

嫁さんの携帯の電源が切れている、普段なら絶対にあり得ない…。

なんとなく、不安が残ったが、とりあえず電車に乗る。

駅から出てすぐに、もう一度携帯を鳴らす、電源は入っていない…。

(電話に出たくないくらい調子がわりぃのかな…?今日もコンビに飯だよなあの調子だもんな…。)

帰り際、最寄のコンビニで急いで朝飯を買い、もう一度電話を入れてみる、電源は切れたまま…。

さすがに、心配になり、帰り道を急ぐ。

「ただいま」

『おかえり』の声は聞こえない…。

(寝てるのかな?)

寝室に急ぐ、眠っているのは娘だけ…、嫁さんがいない。

ダイニングに戻る、テーブルの上に嫁さんの見慣れた文字で書かれた、俺宛の手紙…。

内容は………。

「ふざけんな!!」

「どこに行った!!」

その時、風呂場から水の流れる音に気付く。

水の流れる音は、一杯になった湯船から溢れ出すお湯の音だった…。

その湯船の中には、パジャマ姿のまま、湯船にもたれ掛かり、上を向いたまま、口をあけて眠っている嫁さんの姿があった…。

「おいっ!」

「おいっ!」

「寝てんじゃねぇよ!起きろ!」

「起きろよ!!!!」

目を醒まさない嫁さんの顔を平手で何度も引っ叩いた…。

反応は無い…。

すぐに人工呼吸をした…、嫁さんが呼吸をしていない事を分かるのが怖かったから、呼吸があるかなんて試さなかった、いや…、試せなかった…。

唇を合わせて息を吹き込む…(唇が温かい!大丈夫だ!)

でも、俺が吹き込んだ息に返って来たのは、肺から漏れたと思われる『ボフッ』という音だけ…。

動けなかった…。

湯船から零れていくお湯を呆けたように眺めながら、湯船に微かに浮かぶ浮遊物を見た時、本当は気付いていたのかも知れない…。

時間にして、何分だったのか、それとも数十秒だったのか?

時間の感覚が麻痺していた事だけは覚えている。

(まだ、体があったかい、大丈夫!)

パジャマ姿のまま風呂に入っている嫁さんを湯船から引き上げようとする。

たかが、40数キロの嫁さんが持ち上がらない…鉛の様な重さを感じる。

(でも、体があったかいじゃねぇか!大丈夫!まだ大丈夫!)

救急車!

電話の受話器を握る、『119』たった3つの数字を押すのに、何度プッシュボタンを押し間違えたか分からない…。

錯乱している自分に嫌でも気付かされる…。

ようやく『119』番の番号が押せた。

「119番です、救急ですか?消防ですか?」

「嫁さんが息をしてないかも知れないんです、心臓も停まってるかも!」

「落ち着いて下さい、救急ですね?そちらのご住所は?」

「わかんねぇよ!いつもそれを教えてくれる嫁さんが倒れてんだよっ!頼むから早く嫁さんを助けてくれよっ!!」

「落ち着いて下さい、お近くに、郵便物か何かありませんか?」

「わかんねぇよ!お願いだから早く助けてやってくれよ!」

「ご主人、免許証はお持ちですか?」

「ある!」

「そこにご住所が書いてありませんか?」

そこで、はじめて、住所を伝える事が出来た…。

「分かる範囲で構いませんので、奥さんの状態を教えて頂けませんか?」

その時、はじめて、テーブルの下に転がっていた大量の薬のからが目に入った…。

その中には、嫁さんの向精神薬や睡眠薬に混ざって、俺の頭痛用の劇薬扱いになっている薬をあけた物も含まれていた…。

いつか、嫁さんに向かって言った「おれの薬、飲むと体にすげぇ負担が掛かるんだわ、間違ってもお前は飲むなよ」という言葉を思い出し、やり切れない気持ちで一杯になった…。

電話で、薬の事と風呂場の状況を話す。

「すぐに向かいますので、お待ち下さい。」

救急隊の方が来るまでの時間、俺に何が出来るのか必死で考えた、だが、俺に出来たのは、風呂のお湯を抜く事と嫁さんの手紙を読み返す事そして、動かない嫁さんの側にいる事くらいだけだった…。

数分後、救急隊の方達が到着、嫁さんの救急処置をし始める、何もしてあげられない自分が歯痒い…。

「嫁さん助かりますよね!」

「…今、全力を尽くしています、このまま病院に搬送する事になると思いますので、ご主人もすぐに出れる準備をお願いします。」

その時点の時間が朝の7時前、普段ならどんなに騒がしくても眠っているはずの娘が、普段とは違う騒がしさと雰囲気からか、目を擦りながら
起き出して来る…。

「ぱぱ、おかえり!まま、どうしたの?おびょうき?まま、だいじょうぶかな?」

「起きたのか、ママちょっと具合悪くなっちゃったみたいなんだ…、大丈夫だから心配しなくていいんだよ。」

「ままにあたまつめたくするのもってきてあげようか?」

「…ありがとう、でも、今日はいいかな、それよりさぁ、これから、ママと一緒に病院に行くんだけど、お着替えしてくれるか?」

「うん!いいよ、きゅうきゅうしゃでいくの?」

「うん、そうだよ、だから、はやく着替えような。」

「ちょっとまってね、ままにがんばってっていってくるから!」

「うん、お前が頑張れって言ってくれたらママも元気になるかもな、言って来てくれる?」

「うん!ままがんばってね、なおったら、ごはんつくってね。」

娘の存在が、自分に少しの平静さを取り戻させてくれた…。

娘を着替えさせ、オムツを換え、救急車に乗る。

言葉が出ない俺を見た娘が一言。

「ぱぱもおびょうきなの?ままがねんねしてるから、ぱぱ、おびょうきになんないでね。」

「うん、大丈夫だよ、ごめんな、パパがしっかりしなきゃな!ありがと。」

何も分からないはずの2歳半の娘に励まされながら、某大学病院に到着、すぐに緊急治療室に搬送され、嫁さんの緊急処置が始まる。

娘を抱きかかえたままの俺に、看護師さんが、「娘さんお預かりしましょうか?」と声を掛けてくれる。

電気ショックや胃の洗浄をするのだと思うと、それを娘に見せてはいけないと思った。

娘を預かって貰い、嫁さんの元へ戻る、ずぶ濡れのパジャマを脱がされ、素っ裸の嫁さんが、心臓マッサージや、電気ショック、口からは管で何かを吸い出されていた…。

情けない話だが俺は、その光景を直視出来なかった…。

看護師さんに「気持ちを落ち着かせたいので、少しの間、外でタバコを吸わせて頂けないでしょうか?」と尋ねると、救急隊の方を一人付き添いに付けてくれた。

嫁さんの側を離れ、背中を向けた瞬間、俺の中の感情がはじけた…。

処置をしてくれている医師の方々に向かい叫んでいる俺がいた。

「俺の頭でも、腕でも足でも、心臓でも、どこでもいいから好きに使ってくれて構わねぇから!俺なんてどうなったって構わないから、俺を殺してでも、嫁さんを助けてやって下さい!お願いします!」

医師達は、無言だった…。

側にいてくれた、救急隊の方が「先生達は、今、全力で奥さんを助けようとしてくれてます、ご主人も一度落ち着く為に、タバコ吸いに行きましょう。」と俺を外に連れ出してくれた。

喫煙所まで歩く気力の無かった俺は、救急隊の方の計らいで、救急患者用の出入り口の前でタバコを吸わせて貰っていた。

1本、2本、何も考えられずに、無意味にタバコに火を付け続けた…。

嫁さんが病院に運び込まれてから、1時間に満たない頃だったと思う、一人の看護師さんが俺の側にやって来た。

「嶋村様、奥様の事なのですが…、気持ちの準備をなさって置いて下さい…。」

「………。」

どこかで覚悟はしていた、ただ、病院に運べば、助けてくれるんじゃないかとも思っていた。

本当は、瞳孔が開いている事も、心臓が動いていない事も、呼吸をしていない事も、風呂にほんの少しだけ流れきらずに浮かんでいた浮遊物が嫁さんの体から出た排泄物だと言う事も気付いていた…。

それでも、人工呼吸で、息を吹き込んだ時に触れた嫁さんの体温を信じたかった…。

風呂にはお湯が流れ続けていたのだから、体が温かいのは当然、それも実は気付いていた。

…でも、でも、あの時だけは病院は、医者は万能だと信じたかった…。

(もう1本だけタバコに火を付けたら、嫁さんの側に行こう…)

そう思っていた時に、一般の救急外来の付き添いの人が通りがかりに、「お前、ここをどこだと思っているんだ?タバコは喫煙所で吸え!」

当然の事を注意された。

全く自制が効かなかった…。

くわえていたタバコを投げ捨てると同時に、その人を追いかけ、肩を叩き、俺の方を向かせた瞬間に殴りに行っていた…。

1発、2発、……、俺の呼吸が止まるまで殴り続けた、俺に非がある事は分かっていた、でも、自分を抑える事が出来なかった…。

俺に付き添ってくれた救急隊員の方が、騒ぎに気付いて戻って来たのだろう、倒れ込んだ相手の頭を踏みつけようとした瞬間に、俺を羽交い絞めにして止めてくれた…。

「嶋村さん、事情は説明して置きますから、早く、奥さんの所に行って下さい!」

今でも、あの救急隊員の方には感謝しているし、殴り倒してしまった相手にも、申し訳無かったと思っている…。

ただ、あの時は、完全に自制心と言うものが俺には欠落していた…。

救急隊員の方に促され、嫁さんの側に戻る。

そこで待っていたのは、きれいにシーツを掛けられたまま横たわる嫁さんの姿だった…。

嫁さんの緊急処置を担当してくれた医師が歩み寄って来る。

「最善は尽くしましたが、奥様、残念ですが、お亡くなりになりました、死亡のご確認をお願いします。」

俺の視界から色が消えた…。

目に映る全ての物がモノクロに見えた…。

「すいません、少しだけ時間を頂けませんか?」

「分かりました。」

処置室から出て、表に向かう…。

モノクロの視界の中、なるべく人のいない場所へ向かおうとした…。

少なくとも、娘の目にはとまらない場所へ…。

だが、足が途中で止まってしまった、俺の意思とは関係無く…。

病院の通用口、人は数え切れないほど通る…。

なのに、そこで、俺の足は言う事を利いてくれなくなった。

足が止まったその瞬間から、涙が溢れ出した…。

『大人』と呼ばれる様になってから、はじめて、人前で声をあげて泣いた…、誰憚る事無く、叫ぶ様に泣いた…、そしてその涙は声をひそめだし、唸るような慟哭へと変わって行った…。

涙腺以外の感覚器が全ての機能を失ってから、どれだけの時間が経ったのか分からない…。

何も見えなかった、何も聞こえなかった、その感情が悲しみなのかさえ分からなかった許容量の限界を超えた悲しみは一時的に『悲しい』と言う感情さえ無くすと言う事を経験した…。

不意に、嫁さんを一人にしている事に気付く…。

涙は止まっていた…。

使命感…。

それだけが、それからの数ヶ月、俺を動かしてくれていたのだと思う…。

医師の元へ向かう…。

「嫁さんの死亡確認、させて頂きに参りました。」

「死因は、薬物の大量摂取による心臓機能の停止、自殺と言う扱いになりますので、警察の取調べが入るかと思われます、なお、死因について詳しく知りたい場合は、司法解剖の形になりますが如何致しますか?」

「いえ、これ以上、嫁さんの体に傷を付けたくないので、それで結構です。」

「それでは、ただいまの時間で、死亡確認とさせて頂きます。」

「いくつか、お伺いしても宜しいですか?」

「私がお答え出来る範囲でしたら。」

「嫁さんは苦しんで逝ったんでしょうか?」

「あれだけ大量の薬物を一度に飲まれておりますので、最初の数分で意識が混濁してくるはずなので、奥様は、苦しむ間もなかったと思います、苦しんで亡くなった方はこんなに柔らかい顔にはなりませんよ。」

「ここに来た時には、もう手遅れだったんでしょうか?」

「こちらに、いらした時には、すでに、心停止から2時間以上が経っていましたので119番にご連絡された時点で、すでに、脳の機能も停止していたと思われます。」

「そうですか…、お世話になりました。」

「奥様をご自宅までお連れするまで、一度別室にお運び致しますが、よろしいですか?」

「少しだけ、お時間頂けませんか?娘にもママの顔見せてあげたいので…。」

預かって貰っていた娘を引き取りに行く…。

「ぱぱ!ままおっきした?」

「うーん、まだなんだ…でも、ママに会いに行こう。」

「うん!いく!」

娘を抱っこしながら、嫁さんが眠っている場所へ向かう。

「まま、まだ、ねんねだね。」

「うん、ママさぁ、今まで、いっぱい、いっぱいお前とパパの為にご飯作ってくれたり、お洗濯してくれたりしてたでしょ?」

「うん!すべりだいもやってくれた!」

「そうだよな、それでね、ママ疲れてさぁ、眠くなっちゃたみたいなんだ、今も、ねんねしてるでしょ?」

「うん。」

「だからさぁ、ママこれからゆっくりねんねさせてあげような。」

「いつまで、ままねんねしてるのかなぁ?」

「これから、ずっとなんだ…、でも、今までずっといっぱい、いっぱい頑張ってくれたから、ずっと、ゆっくりねんねさせてあげような。」

「うん、いいよ、ままつかれてねむくなったんだもんね、でもごはんはどうするの?ぱぱがつくるの?」

「うん、パパ頑張るからな!だから、ママにはゆっくりねんねして貰おうな、ママにおやすみって言ってあげな。」

「まま、おやすみ、ちゃんとねんねしてね。」

娘と一緒に、俺も嫁さんにおやすみを言った、そして冷たくなった嫁さんにキスをした…。

鼻から一筋の血が流れた…。

嫁さんの『死』という現実を、正面から受け止めるには、まだまだ時間が掛かる事は分かりきっていた…。

後悔や、自責の念に苛まれる事も覚悟していた…。

それでも、あの日の俺を動かしてくれたのは嫁さんからの最期の手紙であるテーブルの上にあった遺書だった。

『なりさん、今日までありがとう。
〇〇〇(娘の名前)をお願いします。
二人の幸福を心から祈っています。
たくさんの幸せを与えてくれた事に深謝。
さようなら。
       〇〇〇(嫁さんの名前)


この後、嫁さんの自殺の真意や、俺や娘への想いが様々な人達との会話や、遺留品から分かっていく事になる。

俺が、更なる後悔や自責の念に駆られる事になるのは、これからだった。



続く


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

今回の日記は、自殺を肯定するものでは決してありません。

また、今回の日記では、現実の出来事を追っただけで、私のその時の気持ちや、今だからこそ出来る考察も殆ど出来ていません。

次回以降の日記で少しづつ掘り下げて行きたいと思っています。

今は、少しおやすみを下さい。

ごめんなさい。
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  1. 2008/10/08(水) 00:28:57|
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