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メンタル疾患の彼氏彼女を持つ人達へ…(エピソード27)「肉体の消滅」(前編)※メンタル面が不安定な方は安定する時期まで、読み飛ばす事をおすすめします。

このエピソード達は、俺と、今は亡き、嫁さんが過ごして来た時間を懐古しながら、今現在、そういった状況で、悩んだり、困ったり、つまづいたりしている、人達の何かの役に立てればと思い、不定期で、自分と嫁さんのエピソードを、ノンフィクションで、書き綴っているものです…。

現在進行形の物語ではないので、ご注意を…。



エピソード27「肉体の消滅」(前編)



嫁さんの死亡確認をし娘を抱いて呆けていた、俺を待っていたのは、警察の検死だった…。

「嶋村さんですか?」

「はい…そうですが…。」

「奥様の死因についてですが、変死の報告が届いていまして、悪いんですが、嶋村さんこれから現場を見せて貰ってもいいですか?」

「分かりました…。」

病院から警察の車に乗せられ、娘と自宅へ戻る…。

「嶋村さんが、家に帰ってきた時の状況を教えて貰えますか?」

その時の自分が思い出せる限りの状況説明をする…。

「奥さん、自殺と聞いてますが、遺書はありましたか?」

「…これがそうだと思います。」

嫁さんの遺書を刑事さんに見せる。

「なるほどね…、奥さんが、亡くなった時間、ご主人は、どこにいましたか?」

「病院で聞いた死亡推定時間には、まだ職場にいました。」

「そうですか、奥さんが亡くなっていた場所を見せて貰えますか?」

「風呂場です。」

『奥さんが亡くなっていた』他人から言われる事で、嫁さんが本当に、生きていない事を思い知らされる…。

「お風呂場の状況は?」

「奥さんの向きは?」

「どういう風に、亡くなっていました?」

「目は開いてました?」

「口は空いてた?」

「病院で奥さんを見た時に手首にリストカットの跡があったけど、それは、以前からあったの?」

「その事は知ってた?」

次々にぶつけられる質問に、わずか数時間前の記憶がまざまざと甦ってくる…。

事務的に答える事にも限界が来る。

耐えられなかった…。

「刑事さん、この尋問いつまで続くんですかね?いい加減嫁さんの死に様、事細かに思い出すのイヤなんですけど!!」

「すいませんでした、遺書もあるし、自殺で間違いないと思いますが、確認の為に、奥さんの自筆のメモとかありませんか?筆跡鑑定だけしたいので、それと、遺書を一度貸して頂けますか?」

「すぐに返して貰えますか?」

「遺書もメモも、コピーをとったら、すぐに届けさせます。」

「分かりました。」

もう一度車に乗せられ、病院に降ろして貰う、娘と乗せられた車が、パトカーでない事が唯一の救いだった…。

車から降りて、嫁さんの実家と俺の実家に電話を入れる…。

事実だけを伝える事しか出来なかった…。

両家とも、遠方からの上京、事情を飲み込むまでの余裕は無かったのだろう、出来るだけ早く、向かうとの事だけ確認し電話を切った…。

到着は3時間後くらいだろうか…?

隣では、娘が無邪気な笑顔を見せている…。

パパのお休みに、一緒にお出掛けでもしているつもりなのだろう…、その娘の笑顔に、空っぽの作り笑いを返すのがやっと…。

誰かに側にいて欲しかった…。

それまで、いつでも強気の姿勢を貫いて来た俺は、あの日、はじめて、本当の意味での『孤独』というものを知ったのだと思う。

俺が最も信頼している友人に電話をした、忙しいのは百も承知普段なら一度では繋がらないはずの電話が、その日は繋がった…。

「おう!どうしたの?こんな時間に珍しいねぇ、…なんかあった?」

「忙しいとこ悪いっすね…、いや、…嫁さんが亡くなっちゃいました。」

「嶋ちゃん今、どこにいる?」

「〇〇病院の霊安室です。」

「30分くらい待って!これから、すぐに行くから!」

「……今日だけ、甘えさせて貰ってもいいっすかね…?今回だけは、俺一人じゃダメみたいですわ…。」

「何も言わなくていい!チビも一緒だろ?30分だけ待ってて、ごめんなぁ、すぐに行けなくてな…、少しだけまっててな!」

「すんません。」

友人が来てくれるまでの約30分が、途方も無く長く感じられた。

「ぱぱ、まま、ねんねしたまんまだからだいじょうぶだよ、おそとであそぼう!」

嫁さんの側から離れたくない俺がいたが、娘に必要以上の心配を掛けてはいけないと思い、嫁さんの側を離れる…。

娘を遊ばせながらも、俺の心は虚ろだった…。

友人がタクシーを飛ばして病院に到着する。

「…嶋ちゃん、よく一人で頑張ったな、もう大丈夫だからな。」

「忙しいとこすんません…俺、最後の最後で、嫁さんの事守れなかった…、だらしねぇっすね…、最低ですね…俺に助けて欲しくて電話くれた筈なのに、俺気付いてやれなくて…、今日になれば絶対大丈夫ってなめてて…、嫁さんの口だけの『大丈夫』に勝手に安心してて…、で、このザマですよ…、俺しか嫁さんの気持ち拾ってあげられないのに、こんな時に限って、拾ってあげられなかった…。」

安心したのだろう…、それまで無理やり押さえ込んでいた涙が溢れ出す…。

「うん…うん…」

「嫁さん殺したの、俺っすよ!!」

「嶋ちゃん、分かる、分かるけど、違う!嶋ちゃんが精一杯、奥さん大事にしてたのを、俺は知ってる!」

「…全然足りてなかったっすよね、俺の気持ち!」

「奥さん優し過ぎたんだよ…。」

「だからこそ、無理してたのに、俺が…俺がもっと…」

「今は何も言うな…、チビの事を考えてあげよう!なっ!」

いい歳をした男が、抱き合いながら泣いている様子はさぞ滑稽だったことだろう…。

「病院の敷地から出ても大丈夫なのか?」

「少しなら…」

「何か喰ってんのか?」

「いや…。」

「チビも喰ってないの?」

「…はい…そうっすね…」

「外、行こう!」

抱っこした娘のオムツはパンパンに膨れていた…。

娘なりに色んな事を我慢していたんだと思い知らされる…。

その日に限って、お腹すいたとも、オムツ替えてとも言われていない事が、それを物語っていた…。

オムツを替えてから場所を移す。

「嶋ちゃん、一杯飲んでもいいんだぞ。」

「そうっすね…、いくら飲んでも酔え無そうだけど…。」

昼時のレストラン、娘にご飯を食べさせながら、その店で唯一のアルコールである生ビールを、あおる様に飲み続けた…。

全く味を感じないビールを、決して酔う事の無いビールを何杯も飲んだ…。

友人は、それを何も言わずに見ていてくれた…。

本当に人間の温かさに、救われた時間だった…。

この人に恩を返すまでは死ねねぇなとも思った。

霊安室に戻ると、携帯が鳴る、嫁さんの親父さんとお姉さんが病院に着く。

「すいません!!娘さん、最後の最後に守ってあげられなかったです!申し訳ありません…。」

首を横に振りながら、俺の肩に手を置く親父さん…。

嫁さんが眠っている場所へ案内する…。

お互い、言葉は少ない、ただ、意味の無い結果の報告だけをした。

少し遅れて、俺の両親がやってくる。

慰めの言葉が俺を通り抜けて行く…。

親達には勿論悪意は無い、ただ、あの日の俺には全ての言葉が、ただの『音』に聞こえていた…。

嫁さんを部屋に連れて帰る準備が出来た。

死に化粧を施された嫁さんは、血の気が失せていた事も手伝い、本当に真っ白で、綺麗だった…。

その日が土曜日だった事もあり、嫁さんの火葬は週明けまで、伸ばして貰える事になった…。

一日でも長く、嫁さんの体の側にいれる事が嬉しかった…。

嫁さんの友達にも、最期に会わせてやれる時間が出来た。

翌日は、嫁さんの友達からも話が聞けるだろう…。

今夜は、とにかく嫁さんの側にいたい。

両家の家族が眠った頃、嫁さんが好きだった酒を作り、エアコンで冷え切った嫁さんの唇を酒で湿らせる…。

「ごめんな、お前の辛さ、全然分かってあげれてなかったな。」

「本当なら、今頃、お前の事を安心させて三人のこれからを話してるはずだったんだぞ。」

「なんで、俺が一人でしゃべってんだよ…、お前もなんか言えよ…。」

「ごめんな、お前の引き出し、開けさせて貰ったぞ…、俺の書置きのメモまで取って置くんじゃねぇよ、大した事もかいてねぇのに、みんな取って置きやがって…あんなどうでもいいもんを大事に取って置かれたら
切ないだろうが…。」

「なんか言えよ…、なぁ、お嫁ちゃん…。」

「これはな、俺が勝手に思っているだけの事かも知れないけど、お前、自分がいなくなって、俺がこんなにバカみたいに泣くなんて思ってなかったろ?」

「辛いよ、生きて行かなきゃいけないのが…、お前もこんな感じで苦しかったのか?」

「チビの事はしっかり俺が面倒見るよ、お前と俺の子だもん、お前の想いは、しっかり受け止めるつもりだかんな。」

「頼む、もう一回だけでもいいから話そう…頼むからさ…」

返答の無い夫婦の会話はずっと続いていく…。

嗚咽で、俺が声を出せなくなるまで…。

翌日の嫁さんの友人達から話して貰う事になる、嫁さんの言葉で、俺の心は更に、嫁さんに惹かれて行く事になる…。

永遠に消える事の無い、想いと痛みを背負い、嫁さんが隣にいない夜は明けていく…。




後編へ続く
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テーマ:たいせつなひと。 - ジャンル:心と身体

  1. 2008/10/14(火) 21:31:53|
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